FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS SEL2870 レビュー
京都観光のついでに、「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS SEL2870」のレビューをしてきました。 中々辛口のレビューが多いこのレンズですが、旅行時実用足り得るのか…。
今回の経緯
観光に行くことにしました
Kixiは福岡出身で、名古屋を一瞬経由して現在東京に住んでいます。
大きな都市、大阪と京都をスルーしていた訳です。
折角なので、会社に適当な事を言ってゲットした9連休を使って、 行った事の無い京都へ遊びに行って、この標準ズームの有用性を確認しようと思い立った訳です。
観光といったら、カメラ。
観光地でレンズを交換しまくったり、荷物に大量の交換レンズを入れておくのは大変です。
そこで、広角~中望遠くらいをカバーできる、手元にあった「FE 28-70mm F3.5-5.6」を一本だけ鞄に入れて旅行へ行ってきました。
キットレンズという事もあり、持っている人もたくさん居ると思うので、良ければ参考にして頂けたら幸いです。
FE 28-70mm F3.5-5.6とは?
α7シリーズのキットレンズに設定されている、一番安い標準ズームレンズ。
安いと言っても、フルサイズ対応で現行レンズのため、中古で2万以上、新品だと4万くらいはします。
本体・スペックについて
焦点距離
28-70mm。
標準的なズームレンズです。
できれば24mm始まりの方が良かったですが、カールツァイスのレンズとの差別化の為でしょうか。
広角は28mm始まりです。
開放F値
F3.5-5.6。 標準的なズームレンズと同じ値ですね。
APSCより画角の関係からボケやすい筈ですが、その描写は後ほどの作例でご確認ください。
機能性
特に機能と言えるものはありません。
手ぶれ補正付きだというくらいでしょうか。
AF/MF切り替えスイッチ等もありません。 ズームリングと、フォーカスリングのみのシンプルな構成です。
AF性能
速くて、静かです。 ピントの精度も高いため、AF性能はあまり気にせず使えます。
ただし、MF切り替えスイッチがレンズに無いため、背面のレバーで切り替える必要があります。
作例と画質
京都での観光地と、撮影した写真の所感などを書いていきます。
当然、レンズは全て「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS SEL2870」です。
なお、フォトショップで多少色合いなどを調整しています。 設定値も合わせて載せておきますので、よろしければ参考にしてみてください。
水面に写る金閣寺
縦撮りで、水面に映る金閣寺まで入れた一枚。
絞り値 | f/8 |
シャッター速度 | 1/160秒 |
ISO感度 | ISO-100 |
焦点距離 | 64mm |
本当は近付きたかったが、観光客も多くそもそもあまり近くには行けないようになっていたため、望遠よりの64mmで撮影。 ズームレンズの良い所は、構図の微調整を動かずにできる所ですね。
前ボケ金閣寺
前ボケを意識した一枚。
絞り値 | f/5.6 |
シャッター速度 | 1/320秒 |
ISO感度 | ISO-100 |
焦点距離 | 70mm |
この暗いレンズでボケを出したければ、被写体に近付いて背景を遠くに持っていくか、あるいはボケさせるものをかなり手前に持ってくるかの二択。 消去法で、金閣寺に近づけないため前ボケを入れる事にしました。 このように暗いズームレンズでも、工夫をすれば大きなボケを作り出す事は可能です。
夜の清水寺
暗いズームレンズが一番苦手とする所。 夜の撮影です。 キットレンズ等を使っていて、夜間撮影に悩まされる人も多いのではないでしょうか。
絞り値 | f/4 |
シャッター速度 | 1/40秒 |
ISO感度 | ISO-6400 |
焦点距離 | 32mm |
このレンズで夜の撮影をするのであれば、下記を参考にするとよろしいかと思います。
三脚を使う
一番良いです。 シャッター速度を長くして、ISO感度を下げましょう。 バンバン絞っても良いです。 ただし、人など動くものが映り込む場合は、それを活かすかどうかを判断してください。 ※写り込まないように撮るか、あえて動く人を長時間露光でアーティスティックに描くか…
絞り値最小に
もし手持ち撮影なら、絞る余裕などありません。 開放F値にしてください。
なるべく広角に
可能な限り広角で撮ると、手ブレが少なくなると思います。 以上は、下記に多少詳しく書いてありますので、よろしければ参考にしてください。
少し怖い雰囲気を出したくて、暗めに撮りました。
絞り値 | f/8 |
シャッター速度 | 1/60秒 |
ISO感度 | ISO-5000 |
焦点距離 | 28mm |
露出補正 | -3 ステップ |
今回は、露出補正が増えましたね。 これは、どれくらい明るく、暗く撮るかを表したもので、α7シリーズだと専用のダイアルが用意されているので操作しやすいと思います。 EVFを見ながら好みの明るさ/暗さに調整してみると良いと思います。 夜は暗いものですから、カメラのデフォルト設定だと明るく撮ろうとして無理な設定になる事も多いです。 そんな時は、無理に明るく撮ろうとせずに、あえて暗く撮ることで設定に余裕ができます。 今回は写真を暗くする事でできた余裕を使って、F値を8まで絞っています。
下鴨神社(大木)
大木を見上げた一枚。
絞り値 | f/7.1 |
シャッター速度 | 1/60秒 |
ISO感度 | ISO-160 |
焦点距離 | 47mm |
焦点が合っている木の幹あたりの質感を出したかったので、少し絞ってF7.1に。 幹の質感が伝わりますでしょうか… この設定だと、なだらかにボケていく様子は分かりずらいですが、木の葉あたりまで行くとボケているのが分かります。 日差しがかろうじて玉ボケになっていると思います。 この玉ボケを主役にするなら、やっぱり単焦点を使うかもっと接写してしまうのが良いです。
下鴨神社 古本市 (本棚)
ボケかたを分かりやすく撮った一枚。 暗いズームレンズでも、これくらいのボケ味は出せます。
絞り値 | f/4.5 |
シャッター速度 | 1/60秒 |
ISO感度 | ISO-1250 |
焦点距離 | 45mm |
この焦点距離の開放F値です。 ボケすぎず、いい塩梅ではないでしょうか。 ボケ方も、単焦点ほど綺麗ではないですが、自然なボケ方だと思います。
下鴨神社 古本市 (会場)
下鴨神社の古本市。 四畳半神話大系でも出てきましたね。
絞り値 | f/5 |
シャッター速度 | 1/60秒 |
ISO感度 | ISO-500 |
焦点距離 | 58mm |
新緑が綺麗ですね。 (この色はフォトショップで出しました) ぱっと目綺麗なんですけれども、やっぱり隅が流れてしまっています。 ブログに上げるくらいなら問題無いですが、等倍で見たりするとガッカリするかもしれません。 以下に、上記写真をトリミングしたものを貼ります。
中央
カリカリ写っていると思います。 十分シャープですね。
隅
かなり流れてしまっています。 このレンズと上手く付き合うためには「隅が流れる」事を許容しなければなりません。 つまり、見せたいものを画面四隅に入れないようにする。 どうしても四隅に入れる際は、F8程度まで絞るようにするなど、画質を重視するなら運用に制限が出てくる事もあります。 ※絞ってもそこまで劇的に改善しないので、気休め程度ですが…
鴨川沿い 東華菜館の前菜
テーブルフォトはかなり撮りやすいですね。 最短撮影距離が30cmなのも良いです。
絞り値 | f/4.5 |
シャッター速度 | 1/60秒 |
ISO感度 | ISO-1600 |
焦点距離 | 50mm |
このレンズで一番おいしい焦点距離は、50mm付近だと言われています。 テーブルフォトでは、このあたりを使って撮ると自然な画角で撮りやすいのではないでしょうか。 四隅の流れも、テーブルフォトならそこまで気になりません。 大半の場合四隅に料理を入れない上、近い物を撮ると四隅は被写界深度の外に行くことが多いです。
伏見稲荷 狐
伏見稲荷本殿にいる狐。
絞り値 | f/8 |
シャッター速度 | 1/320秒 |
ISO感度 | ISO-100 |
焦点距離 | 55mm |
少し絞って撮ると、より被写体の質感が出ますね。 このレンズは、強いボケはあきらめてキッチリ撮る方向にシフトするとみんなが思ったよりも綺麗に写ると思います。 ボカすレンズではないのです。
伏見稲荷 千本鳥居
伏見稲荷名物、千本鳥居です。
絞り値 | f/3.5 |
シャッター速度 | 1/60秒 |
ISO感度 | ISO-800 |
焦点距離 | 28mm |
絞って撮ったように見えるかもしれませんが、開放F値です。 広角にして、中央あたりにピントを合わせると、かなり広範囲が被写界深度内に入ってくれます。 観光客にノコノコ付いて行くと、気づいたら完全に登山コースに入り込んでいました。 往復二時間の、結構本格的な登山コースで、ひたすら階段を登る苦行を強いられるので、行く人は覚悟して行ってください。 途中はムキムキの外国人ばかり大量に写真に映り込むタイムが発生するので、気も強く持ってください。
伏見稲荷 参道の狐
どこかを見つめているよう。
絞り値 | f/5.6 |
シャッター速度 | 1/80秒 |
ISO感度 | ISO-400 |
焦点距離 | 70mm |
よくある目線の先に空間を開ける構図です。 木漏れ日があったので、玉ボケを狙って撮りました。 70mmで開放F値でも、少し被写体と離れるとこれくらいの小さな玉ボケになってしまいます。 85mm F1.8で撮ってみたかった…。
伏見稲荷 獣道
登山中に迷い込んだ獣道。
絞り値 | f/5 |
シャッター速度 | 1/60秒 |
ISO感度 | ISO-2000 |
焦点距離 | 55mm |
ガチのけもの道です。 ボーッと歩いてたら迷い込みました。 すぐ横には、落ちたら二度と上がって来れないような崖と、崖の下には深緑色の池がありました。
伏見稲荷 四ツ辻
開放的です。ここまで40分以上登る必要があります。
絞り値 | f/8 |
シャッター速度 | 1/500秒 |
ISO感度 | ISO-100 |
焦点距離 | 70mm |
壮大な景色を眺めながら、ひたすらトイレを我慢していました。 最寄りのトイレが、17時頃閉まったらしく、景色どころではありませんでした。
まとめ
このレンズは、下記のような人におすすめです。
- 旅行で荷物をできるだけ軽くしたい!
- 料理を撮りたい!
- サクッと撮って、観光を重視したい!
このレンズである程度満足できると思います。 ボケ用に、50mmくらいの単焦点があると便利かもしれません。
逆に、こんな人にはおすすめできません。
- 描写にとことん拘りたい。
- ボケを活かした撮影を多用したい。
- 観光よりも、美しい写真を撮りたい。
- 風景等を、カッチリ絞って撮りたい。
これを買ってください。
素晴らしいレンズです。 しかし高いです。
特に、アマチュアとハイアマ・プロ向けモデルは、一気に価格が上がる傾向にあります。
しかし、僕たち一般人は今ある装備で戦わなくてはなりません。
そうした時に、今持っている、或いは手に届くレンズの特性を知って頭を使って良い写真を撮らざるをえないのです。 キットレンズとして酷評される「FE 28-70mm F3.5-5.6」ですが、 そのレンズの特性を知って、上手く使ってあげる事ができれば良いレンズを買った時にも経験値として必ず役に立つと思います。
確かに、20万の明るいズームレンズを買えば、大体事足ります。 プロには、24-70 F2.8 と70-200 F2.8の2本をずっと使うような人も居ます。
ですが、僕はプロじゃないので、今持てる機材で、最大限の努力をして撮ろうと思います。 誰か買ってください
それでは。